中部がんゲノム医療研究センター
(がんゲノム検査室)
中部がんゲノム医療研究センター(がんゲノム検査室)
本センターでは、分⼦細胞⽣物学などの基礎医学をもとにした科学技術を駆使することで、患者様個々の病気の原因解明と、より効果の高い治療方法の⽴案をめざします。
そのひとつとして、⼿術後の腫瘍組織を用いたがん関連遺伝⼦異常の解析と培養細胞に対する抗がん剤の感受性を調べることで、患者様個々に応じたがん薬物療法が提供できるようサポートします。将来的には、ゲノムの転写産物であるタンパク質の構造・機能に対する網羅的解析(プロテオミクス※1)を⾏うことで、体内で発現している現象をより具体的に解明し、さらに効果的な治療法の開発に役⽴てます。加えて、がん以外の疾患の検査・研究も⾏っていきます。また、国際基準の品質管理体制でのクリニカルシークエンス※2を実施しており、近隣のクリニックをはじめ、県内県外を問わず各医療機関と連携し、この分野についての検査・研究施設として貢献していきます。
タンパク質の構造や機能、タンパク質どうしの相互作用などを総合的に解析する技術です。新たな医薬品の開発や病気のメカニズムの解明に役⽴てられます。
遺伝⼦解析から得られた結果を医薬品の開発や診断治療などの日常診療につなげることをいいます。患者様に合った抗がん剤を調べる⼿法の一つとして、近年注目されています。
網羅的がん遺伝子解析
PleSSision検査
慶應義塾大学病院と連携して実施する、160~175種類の遺伝子異常を調べるマルチプレックス遺伝子パネル検査で、研究ではなく医療サービスとして提供する遺伝子検査です。得られた検査結果は、Cancer Genomic Board(カンファレンス)に提示され、推奨される治療薬について遺伝子解析担当医・薬物専門医等の専門家と検討し、がん治療情報の提供へつなげます。
PleSSision-Rapid・Rapid-Neo検査
遺伝子解析を低廉化し、より効率的かつ精度の高い個別化診断法の確立を目指した臨床研究・検査です(次世代統合的病理・遺伝子診断システムの開発)。悪性固形腫瘍(がん)の診断確定及び治療のために、原則当院で腫瘍の切除や生検を行う方を対象として行います。
薬剤応答性遺伝子検査
慶應義塾大学病院およびPhosphorus Diagnostics社との共同研究として、薬剤応答性遺伝子検査により薬に対する反応性や代謝能力についての遺伝的体質を調べることで、個々に応じた適切な投与量の決定と副作用発現に関する予測に取り組んでいきます。
抗悪性腫瘍剤感受性試験
腫瘍細胞を「ミニ臓器」として培養、効果が期待できる抗がん剤の検証へ
摘出した組織を用いて、実際の体内臓器を構成する細胞としての性質を持つような特殊培養(3Dオルガノイド培養)を行います。この培養法により育てた「ミニ臓器」に対し複数の抗がん剤を作用させ、効果的な薬剤を推定します。つまり、3Dオルガノイド培養法とPleSSision-Rapid検査を組み合わせることで、遺伝子解析結果によって推定された候補抗がん剤の妥当性について、客観的に検証することが可能となります。
クリニカルバイオバンク
生体試料と生体情報を一元管理、新たな検査・治療法の研究開発へ
超低温冷凍庫により、腫瘍組織や3Dオルガノイド培養細胞を、完全に近い形(冬眠状態)で保存します。保管情報は、2Dバーコードを利用した検体管理システムによりデータベース化し、使用の際の迅速なアクセスを実現しています。また、検査により得られた遺伝子解析情報と細胞機能に関する情報は、厳重なセキュリティ対策を施した専用サーバを用いて電子的に保存します。これらは新しい検査や治療方法の開発に利用され、将来の医療の発展に役立てていきます。
施設紹介
遺伝子(DNA)抽出室
腫痕・正常組織からDNAを取り出します。
DNAの品質と含有量をチェックします。
Pre&Post-PCR室
がん関連遺伝子パネルを増幅した後、シークエンサー(NGS)で解読できるよう塩基的修飾を施します。
シークエンシング室
NGSにより目的とする遺伝子の塩基配列を読み解きます。得られた配列情報を三菱スペース・ソフトウェア社と共有し遺伝子変異を特定します。
細胞培養室
腫瘍細胞を、元あった臓器の一部としての性質を持つように特殊培養します(3Dオルガノイド培養)。患者様個々に対する抗がん薬の有効性を検証します。
実験室
検査・研究の準備を行い、試薬類を調製します。生体機能に関連した多方面の研究を行います。
検体保管室
患者様から採取した様々な組織を長期間適正に保管します。凍結検体として医科学の発展に役立てます。
国際臨床検査成績評価プログラム
当センターでは、がん遺伝子パネル検査の品質水準を維持するため、2018年よりCAPサーベイ*に参加しています。
*CAP(College of American Pathologists:米国病理医協会)
世界108ヶ国・22,000以上の臨床検査室を対象とした国際臨床検査成績評価プログラム(CAPサーベイ)および世界 100ヶ国・7,600以上の検査施設が参加する臨床検査室認定プログラム(LAP)などを実施する第三者認証機関です。
*CAPサーベイ
世界最大規模の外部精度管理調査です。対応する検査項目は2,000以上であり、クリニカルシークエンス(遺伝子検査)領域では現時点で世界唯一のサーベイが提供されています。